園子温監督が映画主演に抜てきした無名女優の素顔 “鬼才”が認めた2人の生い立ち

生い立ちを語った藤丸千(左)と黒河内りく【写真:舛元清香】
生い立ちを語った藤丸千(左)と黒河内りく【写真:舛元清香】

27歳・藤丸は「アニストテレス」特別賞受賞、22歳・黒河内は不登校を経験

 藤丸は1994年、東京都生まれの27歳。2015年10月、ソニー・ミュージックアーティスツ主催オーディションで「第4回アニストテレス」特別賞受賞。以降、CMのナレーションなどを務めてきた。映画出演は、文学好きのキャバ嬢役を演じた「ミセス・ノイズィ」(天野千尋監督)に続き2作目。女優になりたいと思ったのは幼少期。「モスクワにいた時期があって、母はノスタルジーから日本映画のビデオを持ってきていたんです。アニメも見ていたんですけど、『セーラームーン』と同じくらい『緋牡丹博徒』を見ていました。私にとっては富司純子さんが演じたお竜さんが人生のヒロインでした」。

 黒河内は1999年8月8日、東京都生まれの22歳。「私は小学生のときは教室になじめなくて、不登校だったり、保健室登校だったりとあまり明るい感じではなかったです。そんな自分を変えたいと思い、中学のときに、地元の有名な吹奏楽部に所属しました。音楽を通して自分を表現する魅力に気づいて、中高と6年間打ち込みました。大学受験を考えたときに、自分が将来、会社勤めをするイメージが全く思い浮かばなくて、俳優なら、感性を磨けば自分の体1つで稼げるんだと思い、その半年後に園監督のワークショップに応募しました」。

 本作は2人とって、名刺や履歴書代わりになる作品だ。藤丸は「コロナの影響で1年延びて、やっと公開。私にとって、掛け値なしの宝物です。演じるということの難しさ楽しさ、どちらも与えてくれた。人生の中でも特別な作品」。黒河内は「コロナを経験した今こそ、必要とされている映画になった。『立ち上がれ』というメッセージは私自身、意識しておきたいなと思います。俳優としても人間1つの節目、原点。この先、立ち止まるようなことがあっても、この映画を見て、このときの気持ちを思い出したい」と語る。

 今後については「安子からも遠い役、普通の女の子もやりたいし、宇宙人、殺人犯、妖怪も演じてみたい。演じる上では自由ですから。今は(俳優、アクション監督の)坂口拓さんの指導の下、アクションも習っています」(藤丸)。「音楽もやってきたので、女優というだけではなく、アーティスト的なことも取り入れて活動していきたい。これまでは片っ端からオーディションを受けていましたが、自分の感性をもっと大切にしていきたい」(黒河内)。園監督作品からは「紀子の食卓」吉高由里子、「愛のむきだし」の満島ひかり、安藤サクラ、「ヒミズ」の二階堂ふみ、「TOKYO TRIBE」清野菜名らがスターになっている。2人の今後にも注目だ。

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